あたたかい夕暮れ

a0071722_16532099.jpg この1ヶ月間、仕事に全精力を注ぎ込んでいたら、いつの間にか桜の季節が通り過ぎてしまおうとしていました。こんなに桜の花を眺めなかった年はありません。土曜の夕方、愛宕神社が誘っているような気がして、散髪の後に出かけてみました。神社の丘陵を見上げると、まだピンクの色が残っています。

 今年は(も?)桜の開花が早く、散ってしまうのも早いかと思ったら、ほんの少しですが残っていたので救われました。緑の葉には優勢負けしていますが、3分くらいは桜色が残っています。313段の階段を、ふーふー言いながら登段し、頂上の神社からももちを見下ろせば、高い湿度に福岡タワーやヤフードームの足下が靄っています。

 「わたしゃ、福岡生まれじゃけど、こんな景色は初めてやね」と、60過ぎのお母さんの声が聞こえました。ももちのビル群を指差しています。息子夫婦のお嫁さんの方が「お母さん、ずっと忙しかったから」と、ねぎらいの言葉を返しています。僕は風のない神社の境内で、空に向かって久しぶりに両手を大きく伸ばしてみました。春の夕暮れが「よう頑張ったな」と僕の方を向いて優しく微笑んでいます。「しかし、ブログや小説を疎かにしちゃイカン!」の声も聞こえたような。

 山腹の桜の木の横に、桜祭りのための照明に灯がともっています。神様は遅れてきた旅人に、最期の色香を楽しませてくれました。僕は帰りに、唐津街道近くの老舗「魚嘉(うおか)かまぼこ」に寄り、美味しい丸天でも買おうと、開いている引き戸の玄関をくぐりました。「魚嘉」は厚生大臣賞受賞したことのある、こじんまりした古い家屋のお店です。いらっしゃいと、店の若奥さんらしい優しい声が聞こえてきました。
by hosokawatry | 2010-04-11 12:55 | やさしく歌って・自由日記


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