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いつの日にか「天使が愛した17歳」を本に!

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 「天使が愛した17歳」は2005年3月中旬に完成しました。ある出版社さんの第5回文芸大賞に応募した作品で、締め切りにギリギリ間に合った僕の処女作です。どういうわけか3次審査まで進み、問題がある自費出版の会社だとしても、その間「わくわくした気分」で過ごすことが出来ました。

 結局、最終審査まで残ることが出来なかったのですが、それは当然な結果です。文学を語れるような筆力がないのは当然のこと、まず、どう話を進めたら物語になるのかさえ、判っていない状態で書いたものでしたから。それまでは日記を書くことさえなかったし、完成を見た事自体が不思議でなりません。
書いては消しての繰り返しもパソコンがあったからできたことだと思います。

 人間にとって「他人を愛すること」そして「相手を思いやること」は何より大切なことだと思います。そんな大切にしなくてはいけないものを、僕もみんなも速すぎる毎日の中で忘れかけているのでは…。そういうものが、少しでも書けたら、いや書いてみたいなと思う気持ちが書き上げる原動力となり、気持ちが最後まで衰えなかったのが不思議なくらいでした。

 内容は高校時代の話をベースにしてはいますが、書き上がったものはあくまでもフィクションです。その出版社さんから出版化のいい話も頂きましたが、こちらの懐が寒かったので実現しませんでした。いずれ少し手直しして、本にしようと考えています。読んでくれた方の多くが「面白かった」と言ってくれたことを真に受けている幸せ者です、僕は。

 掲載している絵は、「天使が愛した17歳」を読んでくれたよねきちさんのデザインによる表紙です。ある50代の女性の方から、素敵な装丁ねと褒めていただきました。ありがとうよねきちさん。感謝。
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by hosokawatry | 2006-10-27 15:32 | 小説・天使が愛した17歳

「あの蒼い夏に」に登場する「福岡で一番美味しいマティーニ」です。

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 久しぶりに「夜のミーティング」への誘いがあり、夜の街に出かけました。博多駅前の若い姉弟で営む和風の店で、美味しい刺身(美味しかったですよ。良心的ないい店なので、いつか紹介出来れば…)などを食した後、中州のカクテルバーに。いつものように、ドライマティーニが両手を広げて待っていてくれました。

 山田さんはいつものように「ドライな」マティーニを注文。僕も同じようにマティーニをたのみましたが、マスターは人によって調合(カクテル配分)を微妙に変えるのです。その人の好みに合わせて作ってくれるところがプロの仕事。最近は「こちらの方が体に優しいですから」とマティーニ・オン・ザ・ロックを奨められています。うれしいけど、少し悲しい。

 出てくるマティーニは「あの蒼い夏に」に登場する「表面張力の効いた」ものです。写真はグラスの表面が温度差で曇り、透明感に欠けますが、本当は吸い込まれるくらいキレイ。そりゃもう美しすぎて、過去には相当吸い込まれてしまったものです。イヤになるくらい何回も記憶を奪われたり…。量こそ減りましたが、止めるつもりはありません。ですよね、竹田さん。
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by hosokawatry | 2006-10-23 12:49 | やさしく歌って・自由日記

あの蒼い夏に 〜チラシづくりの青春・5〜



                    5

                    *

「なあ、河村。お前の席はワタリさんから離れているからそうでもないだろうけど、突然に雄叫び声をあげたり、結構うるさいんよね」と同期の笠木君は言った。
去年の秋、僕は舞い散る銀杏の黄色い葉を窓の外に見ながら、喫茶店で昼休みのカレーをかき込んでいた。目の前の笠木君はしゃべりながらトルコライスのトンカツを忙しく口に運んだ。スペースインベーダーゲームの音が後ろのテーブルから聞こえている。
「例の、『ア〜カ、ア〜カ、真っ赤っか』かい?」と僕は言った。

 制作担当は営業担当から得意先校正済みのコピー用紙を受け取る。得意先の訂正要望が赤ペンで記入されている。訂正や変更で真っ赤になった校正用紙を手渡される時に、ワタリ係長は『ア〜カ、ア〜カ、真っ赤っか』と投げやりに歌う。時に赤い色は僕たちに絶望感までも運んだ。特に校正用紙に走る縦横無尽の赤い太線は、やり直しを意味する。オリジナルデザインに死刑を宣告するサインペンの線だ。
 「どうしてこんなにグサグサに変更になるの?俺なりに懸命に考えて作ったレイアウトが、デザインが。こんなに跡形もなく?校正の意味は再構成とは違うのを知ってるでしょ?」とワタリ係長は心の中で口を震わせながら、見えない相手に向かって語りかける。赤サインペンの非情な太線がワタリさんを現実に引き戻す。怒りが芽生える。打ち合わせどおり、得意先の意向を反映させたレイアウトだったのに。得意先の言いなりになる営業にも腹が立った。机に隠れている握りしめた拳が震える。
 爆発しそうな心に声が届く。良くあることじゃないか。相手の立場もわかってやれよ、お前は係長だろ。話の分からない新入社員じゃないんだから。行き場をなくした怒りは歌に姿を変えるしかなかった。「すみません。防ぎようがなかったんです」という営業に向かって、自虐気味に歌は放たれる。「ア〜カ、ア〜カ、真っ赤っか」と。そういえば少し虚しいこの歌も、遠くはなれた僕の机に届く回数が増えたような気がしていた。

 「うん、それもあるし、得意先から電話で怒られたら、その後に裏声でオウムのように、必ず得意先のまねをするんよ。『君は売り場のことが、ま〜だよく分かっとら〜ん』とか 『チラシは綺麗なだけではダ〜メ、ダ〜メ』とかね」と笠木君は裏声を交えて話をした。
「ふ〜ん。何か高い声で喋っているのは分かってたけど」と僕は言って、最後の角切りビーフを口に放り込んだ。
 「ストレスだろうね。デザイナーのチーフだし、組織的にも係長で中間管理職だし。発散してるんだよ、ストレスを。きっと」
「そうかもね。最近係長になって、ちょっと多くなったかな?」と笠木君はうなずいた。
「最近、スマイル堂との競合が激しくなって、恵屋のチラシ変更も半端じゃないからね」と言って、僕はコップの水を一口飲んだ。笠木君はフォークで皿をカチャカチャ鳴らしている。

 「恵屋さんも、ぎりぎりまで相手の出方を見ながら、その対策を打とうとするんよね。印刷にかかった後でも値段変更言ってくるもんね」と笠木君は言った。
「ああ、少しでも相手より安くないとダメだと思ってる」
「しかし値段競争も大変だよね。相手が考えている値段まで分かるわけはないし」と笠木君は言って、トルコライスに付いているスパゲティをフォークでくるくる巻き上げた。
「確かに一円でも安いってことは悪いことじゃないけど、僕なら笑顔が綺麗な女の子がいる方に行くね。少しばかり値段が高くても」と僕は言った。「値段のことばかり気にしすぎるんだ。恵屋もスマイル堂も」
少し語気が荒くなった僕を、笠木君はゆっくりとかわした。
「そりゃ、河村は買い物かご下げた奥さんじゃないから、そんなことが言えるんよ」
笠木君はつるつると音を立てて麺をすすった。
「僕だって消費者だ。少しは分かるさ、安さが大切だってことは。しかしね、ただ安けりゃいいってもんじゃないでしょ。あいさつや対応がいいとか、店内がきれいとか、値段の周りのものをもっと大切にしなくちゃいけないんだよ。主婦の人だってきっとそう思ってるよ」と僕は言った。
「ん〜、でも、特売品を載せるのがチラシだし…」

 僕たちは後ろの席からスペースインベーダーの攻撃を受け続けていた。ピュン、ピュン、ピューン。有線放送で流れているダイアナロスのタッチ・ミー・イン・ザ・モーニングにも、ピュン、ピュン、ピューン。
「特売品だけで勝負しようとするから、最後までチラシ変更に追い回されるんだ。笠木君だって困るでしょ、そんなの」
「そう言われりゃ、そうだけど」と言った後、笠木君はフォークを置いて頭の後ろで両手を組んだ。
「殴り合いをしている当事者に見えるのは、相手のパンチと自分のパンチだけ。周りのものがほとんど見えなくなるって、三ツ谷さんから聞いたんだ」と僕は言った。
「パンチって値段のことかい?」
「そう」
僕は大きくうなずいた。
「値段以外にも大切なことはいっぱいあるんだ。チラシには、店の人の笑顔とその人が売りたい商品とそのオススメ理由が書いてあればいいんだ。それが大切なんだ。『いいものをお客さんのために選んだから、ぜひ買ってもらいたい』という気持ちを載せるのさ。恵屋の社長も言っていたじゃないか、チラシはラブレターだって。いつも卵がワンパック68円、砂糖1キロ98円だけじゃ、気持ちの底が浅すぎる。そんなラブレターなら、いずれ飽きられて振られてしまうね、きっと」
「それも三ツ谷さんかい?」
「そうだよ。気持ちが伝わらないものはダメなんだって」
「気持ちって言うけど、実際どうするんよ?」
「例えば、今、秋でしょ。秋サバは旬だしとても美味しい。それを一番に伝えるべきだね。だから、卵よりスペースを大きくとって打ち出すわけ。脂が乗っているとか、身体にいいとか、胡麻サバがおいしいとかいろいろ。そんな新鮮なサバが売り場に揃いましたよって、訴求するんだ」
「ふ〜ん」
「そういう情報をお客さんに届けるのが、チラシのこれからの使命なんだ」と僕は言った。「そういう内容だと、デザインもしやすいでしょ。卵ワンパック68円だけじゃ、絵にならないし。デザイナーにとっても、旬などの情報を盛り込む方がやりやすいと思うけど」
「なるほど…」
「客にとっても、店にとってもその方がいいと思うよ。もちろん笠木君にとっても。皆が幸せになりそうなことを考えなくっちゃ。そういうのを本当の愛情っていうんだ。大切なんだ」
 僕はそう言った後、空になっているカレー皿にそっとスプーンを置いた。用のないスプーンを、長い間強く握りしめていたのだ。指の関節が白くなっていた。それに気づくと少し照れた。

 話が途切れた笠木君と僕は、窓の外の美しい黄色の街路樹に目を向けた 。秋が深まると櫛田神社に続く土居町通りの舗道は銀杏の葉で黄色に染まる。神社の境内には「櫛田のぎなん」と呼ばれる樹齢不詳の大銀杏がでんと座っている。銀杏が黄色に色づくのは、年末繁忙期を迎える僕たちへの「黄色の注意信号」だなんて、まだ二人には分かるはずもなかった。入社一年めの秋は、染まりゆく並木道の美しさだけを見せていた。

「ワタリさんが変なことをしたって聞いたんよね」
昼休みの残り時間を、腕時計で確認しながら笠木君は言った。
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by hosokawatry | 2006-10-16 14:29 | ブログ小説・あの蒼い夏に

中秋の名月を愛でる心。

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 10月7日午後6時過ぎ、唐津からの帰り道。進行方向である東の空にでっかい月が浮かんでいました。山の端から少し上にふわりと黄色に輝く月。その巨大な月はでこぼこ(クレーターといわれる月の凸凹は、ガリレオ・ガリレイが1609年に月面を天体望遠鏡で観察し確認した)を誇示するように、明るい部分と暗い部分をしっかりと見せてくれたので、ついつい見とれてしまうはめに。ウサギが見えるといいなと、目を凝らしましたが判断がつきませんでした。(脇見運転はいけませんね)

 中秋の名月なのかなと思ったけど、調べてみると今年の中秋の名月は10月6日とか。必ずしも中秋の名月=満月ではないのですね。暦の関係から今年の満月は7日ということで、僕がR202で東の方角(福岡方面)に見た月は一番気合いが入った月だったようです。家に帰り着いて写真を撮りましたが、中空を駆け上がった月(掲載の月)はかなり小さくなっていました。撮影の腕が未熟で、ストロボがたかれ、つるんと白い明るい月の写真に。う〜ん、残念。

 結局、月を見ながら風流に酒を飲むこともなく、団子をほおばることもなく…。昔の人がつくりあげてきた「自然と身近にふれあうことを大切にする世界」が実生活の中から離れていき、ちょっぴり残念な気がします。心にゆとりがないのかなと反省。来年こそは忘れずに、10月に入ったらすすきを花瓶に生けて、日本酒を一杯やろ〜っと。
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by hosokawatry | 2006-10-09 11:20 | やさしく歌って・自由日記