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雪が降る日の動物占い

a0071722_282119.jpg 日曜日の午前中は久しぶりに雪が降り、車のフロントガラスが白くなりました。昨日のフロントガラスには黄砂がしっかり張り付いていたし、自然はよくもまあ毎日いろいろとお土産をくれるものです。今朝は風も強く、みぞれが降り、雪が舞う天気なので、ほとんどウォーキングをする人は見かけません。

 僕はこういった、人のやらないときにやりたくなる「へそ曲がり」なところがあるので、ほいほいと「歩き」に出かけたわけです。シャーベット状の雪が残っている路面を歩いていると靴の中が濡れてきました。リーボックのレインウォーカーなのに、何故だろう? いやになっちゃうよね、まったく。ぶつぶつ。

 誰もいない小戸公園を歩き、人の少ないマリノアシティまで足を伸ばしました。九州のムラ市場の鮮魚コーナーで刺激を受けてしまい、帰りに西鉄ストアで生締め真鯛を買って帰るはめに。出刃包丁で3枚おろしにして、皮を剥ぎ、中骨のある血合い部分をカットします。刺身包丁に変え、刺身をひき、皿にもります。脂が乗って、思ったより身がぷりぷりしているので美味しそう。

 早く食べたいので、焦って刺身包丁を洗っていると、右手親指をバッサリ切ってしまいました。今日の動物占いでは、僕は虎なのですが、「調子が良くない日」だということだったので、魚をさばくなんてことはしないほうが良かったわけです。そもそも天気の悪い日のウォーキングがいけなかったのかも。「動物占い」はけっこう当たることもあるので、馬鹿に出来ません。トホホ。
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by hosokawatry | 2008-02-25 02:15 | やさしく歌って・自由日記

あの蒼い夏に 〜チラシづくりの青春・18〜



18


晴照の大将が言った「あげん顔の白かったらいかんばいね」という言葉を聞いたとき、佐里君の白い顔が僕の脳裏を横切った。コンパクトながらすっと通った細い鼻すじ。眼鏡からのぞく二重まぶたが女性的な印象を与える切れ長の目。少し茶色がかった髪の毛と細めの眉毛、そして薄い唇。55kgにも満たない華奢な身体を持つ少年のような20歳。うつむき気味の無垢。肌の白さが拍車をかける。アザミさんがクラブで身体の理想像を語ったとき、僕はすぐに佐里君を想った。アザミさんとすべてが対照的な佐里君。

 僕がよく利用する屋台「晴照」を覗いた白い顔は佐里君だろうか? 以前、確かに「晴照」の旨いおでんのことを彼に話した記憶はある。今日は良くない体調を社長に指摘され、いつもより早く退勤させられた佐里君。体調の優れない佐里君が屋台ののれんをはたしてかき分けるだろうか? たとえ元気でも屋台の暖簾など、縁遠いタイプの人間なのに。
 社長の言うように、確かに最近誤植が増えていると笠木君からも聞いたことがあった。何か悩みでもあるのだろうか。どうしたのだろう。
 僕はコップに残る芋焼酎を少し眺めた後、白い顔の記憶を振り払うようにぐっと一気に飲み干した。コンロの上に乗ったメザシから立ち上る青白い煙を横目で把握しながら、大将が豚骨ラーメンの麺を沸騰している釜の湯から取り出している。鮮やかな手さばきが目の前で繰り広げられる。シャッと床の歩道に飛び散る湯切りの音が聞こえた。

 かすみは冷蔵ガラスケースの中のトマトをじっと眺めている。

「ねえ、河村クン。ワタシって、存在感ある?」
「あると思けど、どうして?」
「本当?」
「うん、そう思う」
「ワタシ、かすみなんだけど。名前が」
 トマトを眺めたままの格好でかすみは言った。
「そうかもしれないけど、仙人が食べる霞よりはずいぶん色気がある」
「その霞って山にかかるやつでしょ。近眼の空気みたいな、風景をぼかす役目の」と、かすみは赤みがさした頬を僕に向けた。「ホント冴えないわよね、名字が『春野』じゃなくてよかったわ。『春のかすみ』さんじゃ、冗談にもならなかったと思うよ、まったく」
「い、いや、ぼけてもいないし、僕にとっては大きな存在感だよ。まあ、マリアンヌ・フェイスフルよりはかなり控えめだけどね」
「マリアンヌってアラン・ドロンに革ジャンでバイク飛ばして逢いにいく人れしょ? 裸の上に皮のスーツを着て」
かすみの「で」の発音が「れ」になりかけている。それに気づくとばつが悪そうに舌を出した。
「へへッ、ワタシ、酔っちゃったのかしら」

「そう、『あの胸にもういちろ』という映画の中れね」
僕も赤い顔した「れ」人間になって、かすみをからかった。
「へぇ〜、河村クンってけっこう意地悪なんだ」と言って、僕の肩をグイと押した。

「衆ちゃん、今日はいい酔い方しとるね。羨ましかよ、横には美人バはべらしとるし」
 大将の声が気持ちよく聞こえる。かすみはニコニコしながら輝いている。屋台のテレビではドリンク剤を手にした二人の男性が「ファイト一発」と叫んでいる。数年前までジャイアンツの王選手が出ていたCMだ。

「ワタシの名前は清い心で生きていくことができて、人に親切に振る舞える人間になれるようにと、警察官の父が希望してつけた名前なの。かすみ草の花言葉を参考にしたんだって。聞けば出しゃばる女の人が好きじゃないんだって言うし、ん〜、かなり考えが古いわよね。最近の若いやつは自分の主張ばかりするから気に食わん。目立つために外面ばかり気にする人間が増えて頭にくる、新人類がどーの、こーのとうるさいんだから。」
 発音を気にしながらゆっくりと喋るかすみの話に僕はうなずきながら聞き入った。
「それに、小学生の時は近所に『百合ちゃん』っていう、背が高い奇麗な同級生の子がいたし…、登校の時なんかいつもワタシが寄り添っている感じで、そう、お祝い用に包んでもらう花束ってところかな。大きな薔薇や百合の花の回りで引き立て役になっているかすみ草。いつも、百合ちゃんの名前が先に呼ばれて、ワタシはいつも後。ふたりのことを『百合ちゃん達』って言われるけど、『かすみちゃん達』って呼ばれたことないしね。この存在感の違い、ねっ、わかる? 高校までず〜っとそうだったし、可哀想でしょ? ワタシ」

 けっして前向きな内容じゃないのに、話は全く暗くないから可愛い。
「でも、僕はとても好きな名前だ」と応えて幕引きを図った。「ダ行」の発音が怪しくなり、そして間延びはじめながらも「ラーメン食べる」といって、僕の心配をよそにかすみはあっさりと丼を空にした。僕は勘定を済ませ、晴照の大将と奥さんにお礼を言って屋台を出た。まだまだ追い山が始まるまでには時間がたっぷりある。
「カクテルが飲みたい、ブラディメアリー。マルガリータとか甘いのれもいいな〜」と、かすみはまだ飲むつもりだ。足取りはまだしっかりとしている。「平均台だって大丈夫だわ」とかすみは言った。
「ねぇ、コマネチみたいでしょ」
かすみは一段高くなった縁石に乗って、慎重にバランスを取りながら歩いた。3メートル先でバランスを壊して、両手を広げる前に車道側に足をついた。その瞬間、脇に溜まっていた雨水が飛び散った。車道を歩いていた黒いシルエットが飛んでくる水をよけながら振り返った。黒いシルエットに目を凝らすと、白いスーツ姿が浮かび上がってくる。シャツはダークな色で、ネクタイの鮮やかさが暗闇を突いて目に飛び込む。小柄だけどヤバい、僕らと違う人種だ。僕は全身から血の気が引いていくのがわかった。
「おいおい、ねーちゃん、も少し気をつけて歩かんといかんバイ」とパンチパーマのお兄さんは声を押し殺して言った。
「す、すみませんでした」と僕たちは羊になり、声を合わせて謝った。洗濯代をよこせと凄まれるかもしれない。僕は覚悟した。
 パンチパーマのオオカミは一歩僕たちに近づいて噛み付かんばかりに顔を寄せて言った。男の整髪料の強烈な匂いが二人を氷付けにした。
「飲んで陽気になっても構わんバッテン、もうちっと周りの人のことも考えちゃらんといかんバイ。ほら、お前達の後ろバ、杖をついた年寄りが歩きよろーが」
「はい、気をつけます」と僕たちはカクンと頭を下げた。
「これから、注意せないかんゾ、えっ。わかったか?」
「はい」ともう一度頭を下げるのを見てパンチパーマのお兄さんは「行ってヨカ」とアゴ先で許してくれた。

 歩道で立ち止まっている杖の老人の目が「あんた、いい男やね」とパンチパーマにささやいている。平常心を取り戻しかけていた僕は、老人と目を合わせたお兄さんの顔がうっすらと上気したのが分った。先の尖った白いトカゲ革の靴がくるっと回って歩きはじめた瞬間、タクシーが水溜まりの水を跳ね飛ばした。「こら〜、待たんカー」と慈悲深い白いスーツは小走りになって車を追いかけていった。

 いろいろと忙しい一日だ。
「いい人でよかったね」とかすみは遠ざかるお兄さんを見ながら言った。
「かすみちゃんはコマネチ以上の存在感だね、参ったよ」と僕はやっと笑いを取り戻すことが出来た。


 かすみはグラスの縁についた塩を舐めながら「マルガリータがとても美味しい」とマスターに気分よく話しかけた。僕はジンバックを流し込みながら、いつものようにサラ・ボーンのLPをリクエストした。コマネチの10点満点の演技について僕は頼りない分析を加え、他の演技者の「完璧でない美しさ」 もいいなとかすみに言った。僕たちは自らの未熟さがつくり出す「面白い状況」にあたふたしながらも、ラッキーな局面を結果として楽しんでいるのかもしれない。『かすみちゃん』ではなくて『百合ちゃん』が相手だったら、バスの中で見かけた怖い顔のパンチパーマのお兄さんとの「二度目のご対面」などあり得なかったと思うのだが。神様は楽しみながらサイコロをふり続け、頭の中の悪魔はまだまだ機会を窺っていた。
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by hosokawatry | 2008-02-18 02:05 | ブログ小説・あの蒼い夏に

ブロッコリー畑でつかまえて

a0071722_141326.jpg 久しぶりの青空の中、福岡県二丈町に「ラドン水」を汲みにいきました。この時期はキリッとした冷涼感のなか、春への期待を背負った日差しがやけに気持ちよくて、つい郊外に出かけたくなりますね。3連休の中日で、軽い渋滞に巻き込まれながらも、窓を開けて車を走らせました。吹き抜ける風は冷たいものの、明るい太陽の光が背筋を前向きに伸ばさせてくれます。

 前原を抜け二丈町に入り、少し行くと道路脇に「ブロッコリー祭り」の案内が。数日前に新聞の地方欄に載っていた記事を思い出して、水汲みの帰りに寄ってみることにしました。「ブロッコリー祭り」の会場は農道に一張りのテントが見えるだけの広い畑の中です。200円を払うとポリ袋と園芸バサミを手渡してくれました。僕は今日、生まれて初めてブロッコリー畑に入ったわけです。

 ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜には、抗がん作用のある成分が多く含まれているといいますし、米国癌学会でも報告された極めて優秀な植物です。子供の時に嫌いで、僕から迫害された歴史を持つ「色白のカリフラワー」と大人になって知った「緑のブロッコリー」。我が家の食卓ではブロッコリーの出番が圧倒的に多くなっています。

 ブロッコリーを摘んだ後にハサミを返しにいくと、テントの中で地元の方による豚汁無料サービスも行われていました。料金の何倍分もの価値ある「パンパンに膨らんだ袋」を下げて帰路についたわけですが、農家の方に悪いような気がしたのも、また事実です。安さだけに気を取られずに、「地産地消」への意識を高めていくことが、僕たちにはもっともっと必要だということでしょうか。

 新鮮な旬の収穫に恵まれた一日。ブロッコリー畑でつかまえた幸せ。せっかくだからサラダだけでなく、たっぷりとブロッコリーを使ってポタージュスープなども楽しんでみたいものです。
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by hosokawatry | 2008-02-11 01:09 | やさしく歌って・自由日記

明日は立春

a0071722_1534579.jpg 冷たい雨がしとしと降る2月3日の日曜日。全国的に寒気が流れ込んでいて、東京のほうでは降雪のため青梅マラソンも中止になったのだとか。福岡のほうでは雪にこそなっていないものの、小雨混じりで気分はやっぱり鉛色です。マラソンを楽しみにしていた人は残念でしょうね。村上春樹の「走ることについて語るときに僕の語ること 」を読んでいたので、中止の気分が分るような気がします。 

 今日は節分。博多区の櫛田神社の豆まきには市長や有名人も参加し、大量に豆や景品を撒いてくれるのでとても賑わいます。僕も豆やボールなどをキャッチして、大切に家に持ち帰った経験があります。櫛田神社は毎年入り口に設置される大きな「お多福のお面」がとても可愛いから大好きです。口の部分を通り抜けて神社に入るのですが、何かいいことがありそうでワクワクしてしまいます。

 近所の愛宕神社でも節分祭が行われ、今日は午前11時30分から恒例の豆まきが行われたはずなのですが、傘をさして出かける「勇気」がなかったのでしっかりキャンセル。日曜恒例「午前のウォーキング」を中止したということです。少しブルー。WEBのラジオサイトからは80年のヒットソング「ハングリー・ハート(ブルース・スプリングスティン)」が流れています。きっと、みたされない気持ちを歌っているのでしょう。

 夕方、近所のスーパーで「大豆」を買って来て、「無病息災」を祈願しよ〜かな。イワシの干し物とひいらぎの枝で、鬼が退散するかどうかは疑問ですが、日本の古くからの習わしは大切にしたいですね。1月末から咲いている近所の梅の花は、春の訪れが遠くないことを告げています。暦の上では明日が立春です。

 雨も上がったようです。
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by hosokawatry | 2008-02-03 15:08 | やさしく歌って・自由日記