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浮世絵名品展の最終日

a0071722_1972280.jpg ぐずついた天気が続く8月の最終週でしたが、今日は久しぶりに暑い太陽にお目にかかれたような、なにか懐かしい感じがしました。7月の12日から福岡市美術館で始まっていた「ボストン美術館・浮世絵名品展」の最終日にやっと出かけてきました。最終日でしたが、開場時間の朝9時30分過ぎに入館したので、思ったような混雑には会いませんでした。

 行こう行こうと思っているうちに、いつの間にか終わっていた作品展が何度もありました。そして、見逃してしまったこともいつの間にか忘れていくという繰り返し。人間は思い立った時、サッと行動を起こさなくてはいけませんね。人生が長くなるにつれ、だんだんと腰が重くなっていくのも分かりますが、それを乗り越えなくてはいけないことを今日、再確認。

 サイズが大きくて迫力のある西洋画に比べて、小ぶりなサイズの絵が多い浮世絵版画。小さい全身絵でも独特の細かい描写には目を見張るものがありますが、僕は「大首絵」といわれる胸から上のアップの迫力ある絵が好きです。喜多川歌麿や東洲斉写楽などの絵師の大首絵はさすがに凄いものがあります。

 葛飾北斎の富士山や波がよく登場する東海道の風景画、歌川広重の白雨(夕立)に街道を急ぐ旅人を描いた風景画も素敵でした。版画は描く人、彫る人、刷る人の3人による技術の息がぴったりと合っていなければなりません。合えば素晴らしい仕上がりが感動を与えますね。本社と支社、営業と制作、夫婦と子供など、それぞれの息がぴったりあえば、いい結果が見えるような気がしますが・・・。頑張らなくっちゃ。
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by hosokawatry | 2008-08-31 19:12 | やさしく歌って・自由日記

風に誘われて

a0071722_1343464.jpg 8月の3日に小戸公園をウォーキングして以来、海辺の散歩に出ることはありませんでした。帰省、オリンピック、諸々の用事などで、歩く距離が極端に減っています。もちろん、37度の気温を記録するなど、暑すぎて歩く気分にならないのも大きな理由のひとつです。

 この3、4日は太平洋高気圧の勢力が弱まっているせいか、やっと死にそうな暑さから解放されています。今朝の雲を通して降り注ぐ光には、夏の翳りを感じることができました。樹々の枝は風にざわめいています。これならウォーキングに出かけられると、久しぶりに帽子をかぶり出かけることに。

 風が結構吹いているので、汗が流れる肌も気持ちよく冷やされます。快調に海辺を歩いていると、元寇防塁跡の石積み海岸では、日本人じゃないような男性が本を広げて読んでいます。写真では暑そうに見えますが、風が絶え間なく吹いているので、実はとても気持ちのよい場所なのです。

 一時間以上歩くと、脚が疲れてきます。まだまだ修行が足りません。ハアハアと家にたどり着くと、オリンピック男子マラソンの結果もかんばしくありませんでした。昨日の星野ジャパンの3位決定戦も残念だったし、気分も今ひとつです。さあ、シャワーでも浴びて、気分を変えよう。居間では2匹の猫が腹を上に向けて寝ています。開け放った窓からは気持ちのよい風が吹き込み、猫のヒゲが揺れていました。とても幸せそうです。うらやましいので僕も午後は昼寝の時間にします。
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by hosokawatry | 2008-08-24 13:50 | やさしく歌って・自由日記

猫の帰省

a0071722_2323197.jpg 今年の盆は唐津に帰省して、オリンピック三昧。昼は西瓜を食べながら、夜はビールを沢山飲んでオリンピックを見続けるという毎日。北京は時差が一時間なので、ほぼ日本時間の感覚で競技メニューが楽しめます。ヨーロッパやアメリカだと時差の関係で、決勝が深夜や明け方になるので見れないことも多かったけど、今回はその心配があまりないからとても楽です。

 昨日は野球の予選リーグで韓国に負けてしまいがっかりしましたが、まだ次があるので頑張ってほしいと思います。今日は水泳の男子400メートルメドレーリレーで銅メダルを取ることができたので、思わずテレビの前でガッツポーズ。北島康介が現役を続けてくれるなら、他の選手の成長を考えると、次のロンドン大会はもっと面白くなるかもしれません。

 一緒に帰省した二匹の猫は、性格が正反対なので面白いものです。テレビの鳥を見ているほうは、広い日本家屋を所狭しと元気一杯に走り回っていました。もう一匹の猫は、さっとテレビやタンスの陰に隠れたっきり出てきません。極端な恐がりなのです。相変わらずの落雷には、二匹とも驚いてはさっと物陰に隠れてしまいます。
 
 Sさんから借りている北方謙三の水滸伝もただいま14巻目に突入。宗の国との戦いも激しさを増してきました。梁山泊のヒーロー達もどんどん死んでいきます。日本選手が出るオリンピック競技を見る時のように、ドキドキします。
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by hosokawatry | 2008-08-17 23:29 | やさしく歌って・自由日記

8月、午後の暗雲

 a0071722_23521366.jpg エアコン大好き派ではなかったので、しばらく前まではできるだけ極力自然な気温の中で過ごすようにしていました。が、この数年はギブアップ状態。今年も25度以上の熱帯夜夜が続き、28度という夜もあるのでもう睡眠不足でダウン寸前です。

 睡眠中は脳や体を休息させようと代謝量を減らすために体温が低くなるそうです。と言うことは、夜寝る時に暑すぎたら、心も身体も静かに休息できないわけですね。人間の身体のメカニズムがそうなっているし、このひと月、睡眠不足で苦しんでいるのは熱帯夜の連続なので仕方のないことかもしれません。

 昼間にマンションの壁が日射で熱くなり、部屋の温度が夜になっても下がりにくいものです。幼い頃住んでいた風通しの良い木造の家は今から思えば天国ですね。窓もブラインドやカーテンを閉め忘れていたらもう地獄です。雨でも降ってくれないかなと思っていたら、最近は夕立ならぬ午後の豪雨。

 日本国中をピンポイントで次々に襲う、集中豪雨が話題になっていますが、このところ福岡でもときどきザーッとやってきます。被害が出るほどの降り方はしないけど、いきなり黒い雲が広がり始め、なにやら不吉な感じ。稲光が暗い空を駆け巡り、雷鳴がとどろき、結構迫力があります。白い入道雲がモクモクと見る見るうちに大きくなり、さっと降り出す夕立のほうが可愛げがあったなと懐かしくなります。りっぱな入道雲を見ることが少なくなったと思うのは僕だけでしょうか。
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by hosokawatry | 2008-08-11 00:05 | やさしく歌って・自由日記

あの蒼い夏に 〜チラシづくりの青春・23〜


                    23


 半数の制作スタッフが出社していたが、午後3時を回ると多くの人が帰り支度をはじめだした。一人二人と人が減り始めて、電話の受話器を掴む手の数も減っていく。隔週休の土曜日にかかってくる電話の件数は多くはない。最近は週休二日制への取り組みへの得意先の理解も進み始めている。
 そのぶん、かかってくる電話は緊急度の高いものが多くなる。内容は深刻なクレームの確率が高くなり、応対に手間取るものも少なくはないことをみんな知っている。担当以外の案件だったとしても、きちんとした会社対応が求められた。辛いけどクレームに対する対応責任は全ての社員に共有される。
 5回目のコール音でやっと竹田さんが受話器を手にした。今日は出社していない永野さんの担当店からの電話だった。竹田さんは永野さんと同じグループに属する僕に内線で電話を回した。
 
 来週売り出し予定の商品入荷が急に出来なくなったとのことだった。チラシにはメインで大きく扱っている商品なので、紙面修正してほしい。お客さんに迷惑はかけられないので進行を止めてほしい。印刷にかかっていたら、印刷を止めてでも訂正してほしいという依頼だった。
 依頼に対して、誰がその判断を下すにも現状の工程状況把握が必要だった。僕は折り返しの電話を約束して受話器を置いた。まずは現状把握をしなくてはならない。最初に永野さんの机の引き出しから、該当するチラシの最終コピーを探し出した。僕は問題の商品を確認した後、工程伝票を調べた。このチラシを印刷するのは大博多印刷だった。

 永野さんのアパートに電話をしたが留守だった。担当営業の湯浦さんも、ワタリ係長もこの日に限って出社していなくて、家の方にもいなかった。
 大博多印刷への問い合わせには、今日午後6時過ぎから輪転機を回す予定だという返事連絡が入った。得意先の担当者の要望を聞き入れるためには、いくつかの手強いハードルがある。
 今から版下修正するには時間がかるということ。そしてそれを製版してフィルムをつくり、さらにそれからアルミの刷版を作ることになる。まだその他にもしなくてはならない工程があった。
 大博多印刷は印刷に入る時間を延ばしてくれるだろうか、やり直しで生じる経費はどうなるのだろうか。僕だけの判断で結論は出せない。
 早い決断が求められるのに、担当者や上司は捕まらない。僕は焦った。野瀬課長の自宅にも電話を入れたがゴルフに出かけていた。

 過ぎ行く時間が焦りを誘う。頭の中で黒い悪魔が「ご苦労なことだな」と僕を冷やかす。

 独身寮に電話を入れ、最後の可能性に懸けた。10回目のコール音が始まるときに受話器は上げられ、声が聞こえ始めた。

「衆矢か。まだ仕事ばしよるとか? お前は『終夜』という名前やけん、休日の昼間に仕事はしちゃいかんやろうが」と三ツ谷さんは笑いながら冗談を口にした。
 三ツ谷さんは中洲のパチンコ屋に本日第2ラウンドの出撃をかけるところだった。偶然にもつかまえることができた僕はいきさつを話し、三ツ谷さんに判断を仰いだ。恵屋さんには最近迷惑をかけることが多かったので、先方の担当者の希望を聞き入れたほうが良いと三ツ谷さんは言った。
 大博多印刷の営業部長に連絡を取ってくれ、印刷時間を深夜に組み替えてもらった。
「すまんバッテン、衆也。版下変更をしに大博多印刷に行ってくれんか。忙しかろうけど」と三ツ谷さんは申し訳なさそうに言った。

 僕はすぐに依頼を受けた恵屋の担当者に電話をした。カットする商品の代わりに、同じ紙面に配置してある商品を大きくすることしかできないことを伝えた。
 大博多印刷まで会社の白いライトバンを飛ばした。着くとすぐに紙面の修正指示を伝え、間違いのないようにと念を押して打ち合わせ室を出た。本当は出来上がってくる製版フィルムのチェックを終えてから帰るべきだろう。今日の僕は長く待てなかったので、チェックはその工程のプロに任せることにした。

 西空の太陽は夕方なのに高かった。夏至からはまだ一ヶ月も過ぎていないので、昼はまだ長い。僕は車のアクセルをふかせながら腕時計を覗き込んだ。3時間くらいかかってしまったのは痛かったけど、これも仕事だ。仕方がない。
 問題が解決してみると、自分の仕事ではなくてもたいへん気持ちが良かった。これで怒りっぽい永野さんが喜んでくれたらもっと良い。営業の湯浦さんから「手間とらせたな」と、礼の言葉をもらえたら良いだろうなと思ったが、顔を思い浮かべると「それはないだろう」ということを再確認させられた。

 会社に戻ると、仕事を途中で投げ出した机の上には、ノートが開いたままになっていた。「感謝&挑戦」というコンセプトが書き込まれている。その先の表現を考えなければならない。
 土曜日夕方の職場はまた、竹田さんと僕の二人っきりになっていた。

「河村、今日は何時に終わるんや?」と竹田さんが声をかけてきた。
「もう、長くはかからないと思います」と応えたら、飲みにいかないかと誘われた。僕は、佐里君がアパートに現れるので、残念だったけど誘いを断った。竹田さんは後頭部に近い首筋をポリポリ掻きながら、そうか、じゃあまたな、と言った。懐かしいジャニス・ジョプリンの熱い声がラジカセをふるわせている。
 
 暑い暑いと言いながら外回りから戻ってきた営業の金井さんが寄って来た。相変わらず、人差し指と中指を蟹の爪のように閉じたり開いたりしている。僕はすぐにセブンスターを差し出した。 

 今日はメインのビジュアルとフレーズのアイデア出しまで終わらせなければいけなかった。そして、持ち帰っている花咲店の開店一周年記念セールの原稿整理も済ます予定だった。
 予定通りに進まないもどかしさを抱えながら、コピーフレーズの2〜3本位は書き出そうとペンを握った。そのとたんに電話のベルが鳴った。

「もしもし、先日のチラシ校正分の追加訂正ですけど、まだ間に合いますか?」
 やれやれ。竹田さんも受話器を握りしめて苦戦していた。自分の仕事ができないでいる。




 結局僕はコピーを一本だけ書いて、会社を退散してしまった。アパートで佐里君と飲むことにしている。つまみを買うために商店街のスーパーに立ち寄った。そして酒屋で缶ビールを半ダース買った。
 シャワーを浴びて、ベランダの窓を開け放って佐里君を待った。薄暗くなってきた隣のテニスコートの端をとら猫がゆっくりと歩いている。
 僕はタバコに火をつけ煙を輪にして一個吹き出した。宙で直径が大きくなっていく煙の輪に向かって、素早く次の小さくて元気のよい輪を吹き出した。小さい輪が大きい輪の中をくぐり抜け、窓の外に消えていく。
 ロバータ・フラックの「やさしく歌って」が大型ウーファーを備えたスピーカーから流れ出す。案外熱いコーヒーも美味しそうだな。僕は一瞬ごとに闇が増していく、とら猫が通り過ぎたテニスコートの暗がりをじっと眺めていた。
 佐里君はまだやって来ない。
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by hosokawatry | 2008-08-04 00:35 | ブログ小説・あの蒼い夏に