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フィニッシュで尻餅

a0071722_1740523.jpg 久しぶりに海岸沿いのウォーキングコースを歩きました。日が差し、風も弱い日曜日の夕方です。大きな太陽が浮かぶ西の空には、落陽前に照らし出された茜色の雲がかかっています。海辺からの沈み行く夕陽を楽しもうと、元寇防塁跡〜小戸公園に出かけました。「今年最後の散歩になるかもしれないな」、などと思いながら歩いていたら、この一年のいろいろな出来事が頭をかすめていきます。 

 ちょうど一年前、姪浜の住吉神社の羽魔矢を見物した後、小戸公園を歩いていたら雨に打たれ、携帯電話を駄目にしてしまいました。それで、今年は1月から外歩きにも安心な防水ケータイです。ところが、防水にしたらあまり雨にも遭いません。皮肉なものです。

 今年もこれまでの健康状態はまあまあでしたが、クリスマス前に腰を痛め、腰が完治する前にインフルエンザ? で、腸をやられひどい下痢状態に。ふ〜、本当にキツかった。おかげで2キロ痩せましたが。ブログ小説「あの蒼い夏に」も秋が終わる頃には完結する予定でしたが、遅れています。反省。いや、猛省。

 今年を体操競技にたとえると、E難度の技も使いまあまあだった鉄棒演技も、フィニッシュでこけてしまった感じです。当然、いい点は付きません。だから来年は最後まで頑張れるよう、再度挑戦しなければなりません。機会を与えてくれた、神様に感謝です。ほんの少し考え事をしてる隙に、カメラに撮るつもりの夕陽が雲に隠れていました。がっくり。ドジだけは何度挑戦しても、治りそうにありませんね。

 この一年、しがないブログ小説にお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。来年、いよいよ感動の最終章に向かっていきますので、できれば最後までよろしくお願いいたします。
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by hosokawatry | 2008-12-29 17:48 | やさしく歌って・自由日記

腰痛、イテテテ

a0071722_24596.jpg 高校3年の時に走り幅跳びで腰を痛めました。椎間板ヘルニアと診断され治療を続けましたが、治る事はありませんでした。痛みを抱えたまま大学4年を迎え、社会に出る前にと、重い腰を上げて手術に踏み切りました。ヘルニアを除去し、一応、それはそれで治りましたが、やはり今でも腰は弱点です。

 腰にメスを入れることの大変さ。成功の確率は100%ではない事。失敗したら下半身にダメージが残るかもしれないなどと、心配事が頭の中を駆け巡る手術の前夜。心細い病院のベッドの中でひとり身体を固くしていました。

 元気づけてくれた母親も帰り、消灯時間が近づく中で、柔らかい足音が聞こえてきました。まだ顔に若さを残す看護婦さんが私のベッドの横にやって来て、話を始めたのです。あなたの手術をする先生は、有名な先生で少しも心配は要らないこと、だから安心して欲しいと。看護婦さんはゆっくりと微笑みながら僕の額に手を置いた後、部屋を出て行きました。

 その心遣いを今でも忘れることはありません。こんな想い出が浮かぶのは、久しぶりに腰を痛めてしまったからです。腰を曲げることができなくて、靴下がはけません。全国高校駅伝をテレビで見ながら、部屋でのびています。クリスマスももうすぐというのに。出歩けないのでまた猫の写真を撮るしかありません。トホホ、情けない。
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by hosokawatry | 2008-12-22 02:07 | やさしく歌って・自由日記

あの蒼い夏に 〜チラシづくりの青春・32〜





                    32



 パブにクリスチナ・リンドバークはいるはずも無かった。代わりに太いむき出しの腕にタトゥを施した、ロッキー山脈の樵のような大男が斧の代わりにビールを持って現れた。今夜はトレードマークの赤いバンダナを巻いてはいなかった。
「バーボンも出しとくかい?」
グラスホッパーの店主は後頭部で束ねた髪の毛を触りながら、ぶっきらぼうに訊いた。
「はい、それからポテトチップスとバターコーン、それにアタリメをお願いします」
 僕はバーボンのキープの記憶をたどりながら、つまみを注文した。

 レーナード・スキナードのサウンドがカントリー調の店内に響いている。厚みのある引き摺った音。サザンロックが懐かしい土の匂いを運んでくるようだ。開き戸を押しのけながら、マカロニウエスタンのジュリアーノ・ジェンマが拳銃片手に突然入ってきても、恐らく僕の中では違和感は感じないだろう。西部? 南部? マカロニ? 良くは分からないが、それはともかくアメリカ的なのだ。曖昧だが、なんとなく大らかな感じの中にいる。居心地はそんなに悪くない。
 笠木君は出来るだけ仕事には触れない話から始めた。ギターが弾ける笠木君は四畳半フォークの話題に胸を張った。キヨシ君はポテトチップスを齧りながらグイとビールを飲み干した。バターと唐辛子で炒めたアタリメで、バーボンロックをやる頃には、いつものようにアートとデザインの違いについて、激しく声が飛び交うようになっていた。
 アルコールに赤くなったキヨシ君の顔の隣で、営業の前田の顔だけが照度を落とした明かりの下で青白く見える。酒を飲んでも赤くならないタイプの人間なのだろう。
 前田がもう少し腹にたまるものはないですか、と訊いてきたので、ピリッと辛いチリライスを一皿注文した。美味しそうなので、みんなでつつくと、すぐに食べ終わってしまった。前田はチリライスの分け前に不満そうだった。
 若者はいつも腹を空かしている。
 前田は渋い顔をしてポテトチップスを齧りながら、周りを見渡していた。眼が少し座りかけて、瞳の中の光にはオオカミの欲望が誕生しようとしている。斜め前の四人掛けテーブルに若い女性の三人連れが座っていた。

「ファクシミリが来年か再来年に導入されるって、支店長から聞きました」
 僕たちが知らない情報を、入社一年目の前田が知っていた。少し不愉快だった。
「書類情報をそのまま伝送できるんです。すごいですね。僕は担当店が比較的近いのでそうでもないけど、湯浦さんたちは助かるでしょうね。何時間も車に乗って、わざわざ原稿入稿や校正に行かなくても良くなるかもしれないし」
「へ〜、そんなものが会社に入るの? 便利になるね」
 キヨシ君は嬉しそうだった。
「しかしね、もしそうなら前田たちは、仕事が無くなるわけだ。えっ、困るよね、そうなったら」
 今日一日、思うようにならなかった僕は、少し前田に絡んだ。「湯浦さんだって、そうだ」
「打ち合わせが必要な時だけ行けば良くなるし、出張の負担も減るし、ずいぶん便利になると思いますけどね」
 前田はロックグラスのバーボンに視線を落としながら、三人連れの女の子にちらっと目を配ってる。


「今だって、きちんと打ち合わせをしてこないやん、営業の人は」
 笠木君が営業の仕事ぶりを批判したら、すぐに前田の顔に反抗の色が浮かんだ。
「それは、きちんとしたデザインを上げてくれない制作の人だって同じですよ」
 前田は気色ばんだ顔を笠木君に向けた。
「でも、いいやん。これからは前田たちの仕事はファクシミリがしてくれるというし、楽になって。まあ、ファクシミリは正確に原稿を届けてくれるだろうから、こっちは構わないけどね、営業の人がい行かなくなっても。ファクシミリは打ち合わせ能力は持っていないけど、まあ、現状でもどうせ出来てないわけだし、同じやからね」
 笠木君は皮肉を交えて揶揄した。
 営業も制作も頑張る人は頑張っている。もちろん、頑張れない人も多く存在する。そんなことは誰でも分かっているはずなのに、アルコールが入ると、タッグを組むパートナーの力量不足や熱意不足に我慢が出来なくなる。
 職種間で歪みあってもお互いが前に進むことはない。だからといって、対立を恐れて話すことを止めたら成長できるはずがない。そのまま昨日の世界に取り残されてしまうだけだ。僕たちは毎日、異論や違和感という壁に戸惑いながらも立ち向かっている。僕は信じる。壁の向こうには、今日よりもっと魅力的な明日が必ずあるに違いないと。そうでなければ、喘ぎながらも歩みを進める毎日の意味が無くなってしまう。
 僕たちは北アメリカに生息するビーバーのように、齧り倒した水辺の木々を懸命に広い集めている。お気に入りの小川のダムが出来上がる前に、洪水で流されてしまうかもしれないというのに。運の良し悪しはサイコロ好きな神様が握っているから、ちょっぴり危険ではあるが、そう言ったところで、今の僕たちにはどうしようもない。
 青春は懸命なお人好し。だからビーバーのように可愛くもあるし、けっしてそのことが滑稽だとは思わない。とにかく前を見続けるしかないのだ。

 飛び交う声がさらに熱を帯びてきた。大声の割に言葉は痩せて、会話は不毛の領域にさしかかっていた。キヨシ君がトイレのために席を立った。瞬間、会話が途切れた。テーブルの上にはタバコの煙と非難の応酬に疲れた心地悪さが居座っている。
 いなくなった佐里君と明日会う予定のかすみが頭の中で交互に浮かんだ。落ち着かない気持ちがアルコールに加速され、非難合戦の後でもあり、いつものように気持ちよく酔えなかった。
 

「男ばっかりで、こんな仕事の話ばかりじゃ面白くないって思いません?」
 しばらくしてから前田が口を開き、若い女性の3人組を視線で指した。
「僕が話を付けてきましょうか?」
 身を乗り出す前田に、トイレから帰ってきたキヨシ君が止めとけよと言ったが、このくらいのことが出来ない男は駄目だという顔で立ち上がった。
「勝手にしとけばいいんよ、言っても分からんやつは」と笠木君は怒気を含ませて言ったが、前田の成功を期待する心が透けて見えるような気がして面白かった。三人組の中の一人は胸の大きい娘だったからだ。理性はかろうじて保てているが、羊の脳の下からトカゲの脳みそがその影響力をじわりと発揮し始めている。
「一人だけクリスチナ・リンドバークがいたね」と、僕はその状況を楽しみながら笠木君に言った。
「いや、まだその領域まで達していない。あれは芸術だ、爆発だ」と笠木君は北欧のセクシー娘を賞賛した。「比べること自体、失礼だ」

 ほっとけとは言ったものの、笠木君もすぐに席に帰ってこない前田を気にしている。一度、自分のグラスを取りに戻っただけで、そのまま女性軍の中で笑顔を振りまいている。百八十センチはゆうに超える長身と甘めのマスクの前田には、モテる要素が詰まっていた。キャッ、キャッという声に混じって、ハハハという男の正統な笑い声が聞こえてくる。悔しいけれど、楽しそうだ。
 キヨシ君が放っといて帰りましょうかねと、こりゃ駄目だというように首を左右に振りながら言った。言うことを聞かなかった後輩に、嫉妬心が混じった怒りが少しずつ顔を見せ始めている。

「ここは酒を楽しむところで、ナンパするところじゃないんだよ。こんな事するんじゃ、もう来てもらわなくても結構。お前さんたちの仲間にはよく言っといてもらわないと」
 店主は僕たちを見据えて、太くて低い声で告げた。腕のタトゥも怒っていた。
 前田は一緒に踊ろうとでもしたのか、嫌がる女の子の腕を引っ張り始めたかと思うと、グエッ〜とテーブルの上に吐き散らし、気を失ったまま平伏した。グラスや皿が床に飛び散り、女性の悲鳴を皿の裂ける音が追いかける。突然で一瞬の出来事に呆然とし、女性や店主の怒りと困惑の中、頭を下げて謝り続けるしかなかった。前田の嘔吐物が容赦なく女性のブラウスに飛び散っている。

 僕たちは二軒目の店にも行けず、大柄な前田の身体を支えながら独身寮まで帰り着いた。気を失った身体は柔らかい鉛のように重く、三人掛かりでもてこずった。ギシギシと軋む独身寮の狭い階段を運ぶ苦しさは、普段はペンしか持たない僕たちの想像を遥かに超えていた。熱帯夜の中の重労働で僕たちは汗まみれになり、僕の手も前田の嘔吐物でべたべたと汚れている。僕たちは、どうしてこんなに大きい人間を入社させたんだと、人事部をののしりながら手を洗った。
 蒼い顔をしているものの、安堵感が漂うベッドの上の前田の寝顔を見ていると、再度怒りがこみ上げてきた。
 笠木君がすぐに自分の部屋から黒の太マジックを持ってきた。
「朝、歯を磨く時にびっくりするやろね」と、笠木君は言った後、前田の鼻の下にグイグイとひげを書き始めた。
「そ、それ、油性じゃないですか」
 慌てるキヨシ君を尻目に、大丈夫、大丈夫と言いながら顎にもひげを入れている。
 僕も「少しは眼が悪くなるくらいに本でも読めよ、若いの」と言いながら黒ブチの眼鏡を眼の回りにプレゼントしてあげた。
「それなら僕も」と言った後、キヨシ君は三倍は太い眉毛を書き入れた。そしてさらに、閉じている目蓋に眼を書き込んだ。「夜に出てくる幽霊も、これなら逆にびっくりするかもしれないね」
「明日は休みだから、良いだろう」と僕は言った。
 よく考えると、前田は土曜日にもよく得意先に出向いている。ファクシミリが導入されていれば、前田が言ったように、明日の出張は救われる可能性があったのかもしれない。でも、残念ながらまだまだファクシミリは先の話だ。

 
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by hosokawatry | 2008-12-14 14:05 | ブログ小説・あの蒼い夏に

猫は布団で丸くなる

a0071722_033985.jpg 昨日の土曜日は久しぶりに雪が降りました。今日の日曜日の朝は結構冷え込み、ついに暖房を入れました。この数年、師走といえども寒い感じがしなくて、年が明けてからやっと暖房のお世話になったことも。地球温暖化は福岡からホワイトクリスマスの楽しみを奪ってしまったようです。

 しかし今年は早々に九州にも寒気が流れ込み、例年になく寒いような気がします。そんな今日は12月の第一日曜日で、恒例の「福岡国際マラソン」が行われました。僕の住まいはマラソンコースに近いので、よく朝日新聞のマークが付いた紙旗を振りながら応援するのですが、今日はTVで眺めるだけにしました。

 昔はダイエー所属だった中山竹通が、世界記録をはるかに上回る超高速で、みぞれが降る前半をぶっ飛ばしたり、瀬古がイカンガーを逆転して優勝したりと、本当に面白かったものです。最近はアフリカ勢にまったく歯が立たず、期待が持てないのが残念です。結局、北京オリンピック銅メダルのツェガエ・ケベデ(エチオピア)が2時間6分10秒(すごい!)で初優勝しました。

 僕はうとうとしてしまい、TVの最後の場面は見逃してしまいました。僕の後ろでは、我が家の猫がまあるくなって寝ています。マラソンのことを書いている村上春樹の「シドニー」をBOOK OFFで買ってきていたので、少し読んでみようかな。指の爪がみかんの皮で黄色になっている手で、寝ている頭を撫でようとしたら、猫に不機嫌な顔をされた日曜日の午後でした。
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by hosokawatry | 2008-12-08 00:36 | やさしく歌って・自由日記