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ジリジリと焦げていく

ジリジリと焦げていく_a0071722_0135612.jpg 35度とか36度とか、暑いったらありゃしない。なんと国内では39度の気温が観測されたところがあるとか。湿度も高いので本当に嫌になりますね。それに、夜の最低気温が27度くらいあるので、暑くて眠れずグロッキー気味です。エアコンの睡眠タイマーを入れて寝ると、切れたとたんに暑くなって目が覚め、もう最悪。

 久しぶりに唐津の墓地の墓掃除に行ってきました。草がびっしり生えていたので、掃除というより草むしりに行ったという方が正しいですね。軍手をはめた手で懸命に草を抜き、頑固な生え方をしているものは掘り起こして取り去ります。半袖だったので腕がジリジリ焼けていきます。アシナガバチが通り過ぎ、Uターンして向かってくるので、気を抜けません。

 福岡への帰りに、虹ノ松原海岸にある「魚半別館モーラー邸」で昼食をとることにしました。ちょうど午後2時を過ぎ、ランチタイムが終わったので軽食しか出来ないとのことで、カレーを食べることに。全面採光のガラス窓を通して、目の前に白い砂浜が広がっています。目隠しをされた子供達の西瓜割りに興じる声、砂に映る人影が短い午後。

 海水浴に出かけることもなくなったナ〜、と少し情けない気持ち。開放的な夏が大好きで、海だ、山だと飛び跳ねていたころがあったなんて・・・。松林ではテントが張ってあり、キャンプでもしているのかしら。モーラー邸の人が「プールもありますので、よろしかったらまたお越し下さい」と声をかけてくれました。もうワイルドな浜より静かなプールのほうが似合うようになったのかな。かなり悔しい。心がジリジリと焦げたような気がしました。
# by hosokawatry | 2008-07-28 00:17 | やさしく歌って・自由日記

あの蒼い夏に 〜チラシづくりの青春・22〜



                    22
 

 僕はガサゴソという音で目を覚ました。机にうつ伏せになった状態で音の方向に視線を向けると、壁際の使用済み版下棚の前に人がいた。パチンコに行ったはずの三ツ谷さんの後ろ姿がある。その版下墓場で写植文字をピンセットで剥がしていた。
 僕はどのくらい寝込んだのだろう。壁時計に目をやると午後11時30分を過ぎていた。記憶は紙面1/3迄のチェックにとどまっている。僕は20分の仕事をした後、一時間以上も寝てしまったことになる。

 隣の机に僕がやりかけた最終チェックのコピー用紙は広げられていた。残りのチェックは三ツ谷さんが済ませてくれたのだろうか。気付かれないように顔を僅かに浮かせて用紙を覗いた。白い部分が見当たらず、紙面全体が黄色のマーキングで覆われてしまっている。紙面にはかなりの赤文字が入っている。誤植が多かったのだろう。それで、三ツ谷さんは必要な写植文字を探していたに違いない。

 やり残したチェックの続きを済ませ、その上、写植文字を拾って修正までも。
 なんと言うことだろう。言葉では表現できないものが僕の胸を触れて通り過ぎた。

 僕は生温い室温の中で鳥肌を立てていた。
 
 思わぬ光景に動揺して顔を上げることが出来なかった。昨夜の徹夜デートのつけがもたらしたものを、三ツ谷さんが何も言わずにフォローしてくれている。自分が蒔いた種なのに…。チラシの間違いなど許されない状況の中にある僕を、救おうとしてくれているのだ、きっと。自覚の足りない自分が恥ずかしかった。

 三ツ谷さんは小さい写植文字をテープで止め終わると、もう一度チェックして最終版下のコピーを取り始めた。僕はコピーの音で目覚めたことにして、勇気を奮い起こして顔を起した。

「二カ所だけ文字が直せんやったけん、後は色校の時たい」と三ツ谷さんは言って、版下とコピーをセットにして僕の机に置いた。
 僕は目を潤ませながら「すみません」としか言えなかった。

「飲んだ翌日はきつかけんなぁ」と僕の肩を右手でポンと叩いて独身寮に帰っていった。

 永野さんの言葉は僕の心を氷漬けにし、三ツ谷さんの行動は僕の心を氷解させた。何が一番大切なことか、考える必要もなかった。僕はただひとつの理由で今日の最後を確かなものにできたのだ。
 僕たちの周りには言葉を越えるものが確実に存在する。
「飲んだ翌日はきつかけんなぁ」の一言が蘇ると、再び涙がにじみ視界がぼやけた。

 FMではジェットストリームが流れ始めている。もうすぐおかまバーが大好きな大博多印刷の営業マンが現れるだろう。僕は急いでトイレで顔を洗った。



 僕はぼろ雑巾のようにクタクタになった身体をベッドに投げ出したとたん、朝が電話のベルとともにいきなり訪れた。
 仕事から逃れられない素敵な土曜日が始まろうとしている。皮肉なもので、休日出勤の日の空は青い。

「河村クン、おはよう。どう、昨日は元気だった?」
 キュートな天使の声が朝の受話器から溢れ出す。
「おかげさまで、忘れられない金曜日になったよ」と僕は言った後、理由をかいつまんで説明した。
「なるほど、昨日の夜も午前様だったわけね。電話に出ないわけだ。ほんとうによく働く若者だこと。感心しちゃうわね、まったく」と、かすみはあきれながらも、来週はじめにゼミの二泊三日の合宿旅行で湯布院に行くことを話し始め、スケジュールを細かく読み上げた。ただ、梅雨が明けるかどうか微妙な時期だったので、天気が気になると言った。天使は話し好きだ。僕が今日も仕事だと言うと残念そうに、ゼミ合宿から帰ったらまた会う約束をして受話器を置いた。
 

 特別の場合を除いて、休日出勤の場合は一時間以上遅く出かける。土曜日の朝10時半。バラの洋館に女の子の姿は見えなかった。遅い時間だったので、僕は久しぶりにバスの座席に座って出勤した。
 今日の夜は佐里君がアパートにやって来る予定なので、仕事は夕方までにかたをつけなければならなかった。細々とした仕事を済ませると、来週末に提出予定の花咲店の開店1周年祭のチラシスケッチと年末年始の恵屋合同チラシのプレゼン案が残った。
 
 残った二つの大きな仕事に優先順位をつけた後、笠木君とキヨシ君と近くのブラジレイロに昼食を取りに出かけた。僕たちはとても美味しいハッシュド・ビーフを食べながら、今年発売予定のプリントゴッコについて話を交わした。情報通の笠木君が丁寧に解説してくれるので助かる。
 今日は飲みにいけないけど、と僕がいうと、キヨシ君は来週グラスホッパーに行きましょうと言った。笠木君はムーランの方が良いけど、と口を尖らせる。

 午後から恵屋の年末・年始合同チラシのコンセプトメイクとアイデア出しを始めた。

 支店内につくられた5つの制作グループによる「社内競合プレテ」は既に始まっている。僕のグループはデザイナーの三ツ谷さんと永野さん、コピーライターである僕の3人がメンバーだった。同期入社の三ツ谷さんと永野さんは誰もが認める不仲であるが、ワタリ係長が考えたこのグルーピングには何か訳があるのかもしれない。年長であることから永野さんがグループリーダーになっている。
 今週ミーティングをしようと永野さんに言われたのだが、来週にという僕の希望を通してもらっている。来週頭のアイデアの擦り合わせに間に合わすには、どうしても今日中にはアイデア出しまで進めておかなければならない。
 
 博多祇園山笠の追い山が駆け抜けてから36時間ほど過ぎた。もうすぐ梅雨明け宣言がなされるだろう。僕は額に汗をかきながら、12月30日と1月1日に新聞折り込みされるチラシ内容を考えている。
 訓練すれば、かき氷を食べながら暖房器具のイメージコピーを書くことも難しくはない。ただし頭の中に冬を作り出す作業には必要以上に時間を取られてしまう。「その気」になるのが遅いことが僕の欠点でもあった。しかし、今日は時間を多くはかけられない。佐里君が夕方以降に僕のアパートにやってくるからだ。今日は特に効率よく仕事をしなければならない。急げ、急げ。
 チラシはラブレターだと言い放つ恵屋の社長になった気分で、年末と年始の「気持ちの伝え方」を考えることにした。僕は今、5000人の社員のトップに立つ社長だ。まず大晦日の気分で「感謝」というキーワードを、次に元旦の気持ちになって「挑戦」というキーワードを抽出した。年末・年始のセールコンセプトは「感謝&挑戦」に決めた。

 コンセプトをお客様に、消費者に届きやすいように表現することが僕らの仕事だ。ミーティングのために、まずはコピーフレーズとビジュアルのアイデアを複数案、出さなくてはならない。
 アイデア捻出モードに入ろうとしたところで、電話が鳴り始めた。
# by hosokawatry | 2008-07-21 12:25 | ブログ小説・あの蒼い夏に

夕立の後は

夕立の後は_a0071722_0274692.jpg 先週の日曜日は能古島のハードな散策後、渡船場で飲んだ昼間のビールの味が忘れられず、今日は家でホークスの野球中継を見ながらまた飲んでしまいました。今日はビールではなくて発泡酒ですが。一本100円少しのこの発泡酒はサッポロの「麦とホップ」といい、CMで田村正和が「ビールと間違えた」と言わされる味わいを持っています。

 先週から暑さに耐えきれず、夜は芋焼酎から発泡酒に変わることもしばしば。そこで、そのTVCMが引っかかっていたので「麦とホップ」を買ってみたのです。すると、これが結構いける味です。きめの細かい泡こそ望めないものの、コーラを買う値段で買えることを考慮に入れると、個人的にはとてもおすすめ品というわけ。

 軽い夕立が去った後、ウォーキングに出かけました。ちょうど、博多祇園山笠の集団山見せが終わったくらいでしょう。小戸公園も湿気とともに夏の草いきれが濃く、息苦しいほど。ヨットハーバーの南側緑地は、写真のように簡単なストレッチングなどのフィットネス器具が10近く備え付けられています。今日は若いおじいさんとお孫さんの二人連れが遊んでいました。

 生の松原海水浴場では、帰りの準備をしていた外国の方のグループが海岸線の掃除をしていました。腰回りの豊かな白人独特の中年体型の方をはじめ、若い人も一緒になってゴミを拾っています。とても良い光景です。つい、ニコニコしてしまいます。滝のような汗が流れる中、気持ちは妙に爽やかでした。
# by hosokawatry | 2008-07-14 00:31 | やさしく歌って・自由日記

梅雨が明けて

梅雨が明けて_a0071722_1923128.jpg 薄い雲や千切れた雲が広がっているものの、日差しが強く降り注ぐ日曜日。ついに梅雨明けがやってきました。福岡は関東地方より後に梅雨入り宣言が出されたので、「あら、もう梅雨が明けたの?」という拍子抜けの感。梅雨の期間は歴代5番目?に短いものだったそうですが、雨量は平年以上だったのだとか。

 昨日より湿度が低く、こんな晴れた日は部屋でじっとしているわけにはいきません。さっそく、デイパックと帽子を持って能古島(のこのしま)に出かけました。前回出かけたのは菜の花が咲いている頃だったので、気持ちよく歩けました。しかし今日の自然条件は気温33~34度。少し手強い条件だったというわけです。

 能古渡船場からのこのしまアイランドパークまでは、いきなり登りが続く約3Kmの道筋。自転車で向かった大学生カップルも押し歩きになっています。春は息が切れることはなかったのですが、今日はハアハアとやっとのことでアイランドパークまで這うようにたどり着きました。フラフラになりながら入園口の日陰の石段に腰を降ろしたら、宮沢りえがご苦労さんでしたと、冷えた500㎖の伊右衛門を差し出してくれました。幻覚です。

 僕はヌルくなったペットボトルのお茶を飲みながら、木陰の下で約10分の小休止。涼風に勇気をもらい、帰りの自然探勝路に向かいました。竹林と広葉樹がつくる日陰の中を下ります。途中、玄界灘の方を見ると海の中に元気になった玄界島が微笑んでいます。今度は、玄界島に行こう。渡船場の食堂でいつもの「サザエ丼」と、今日は特別にキリンラガー(350㎖、280円)を注文しました。こんなに旨いビールは滅多に飲めませんね。
# by hosokawatry | 2008-07-06 19:28 | やさしく歌って・自由日記

霧雨の中で

霧雨の中で_a0071722_1365273.jpg Sさんから借りている北方謙三の「水滸伝(全19巻/文庫本)」の8冊目を読みながら、ベランダを眺めると蔓性の植物が鉄枠に絡み付きながら伸びているのに気付きます。つい先日までは、そこまでは伸びてなかったのに。あっという間に生長します。早いものです。

 水滸伝の物語も展開が早く、梁山泊に身を投じた有志達も官軍との戦いの中で次々と命を落としていきます。が、信じるもののために死をものともせず戦う潔さに圧倒され、眠っていた自分の中の何かが確実に揺り起こされてしまいます。志を大切にする姿勢だけはどんなことがあっても無くしたくないなと…。

 夕方に生の松原まで散歩をしましたが、目の前の博多湾に浮かぶ能古島も上の方が雲に隠れてしまっています。どんよりした雲が広がる6月最後の日曜日。今年も半分過ぎてしまいました。あれもしたい、これもしなければと思っていたものの、出来たものはほんの僅か。遅々として進まず。カタツムリにも追い抜かれるのではないかといった状態です。植物の生長のスピードに目を丸くするはずですね。

 傘をさすほどの雨ではないけれど、遠くの水平線や山の稜線は霧雨に煙っています。遠くが見えずに不安が顔をのぞかす日曜日は、少し立ち止まって、「よし、明日からまた頑張らなくっちゃ」とねじを巻く日なのかもしれません。明日からの晴れた日を精一杯走れるように、そして志をしっかりと貫けるように。
# by hosokawatry | 2008-06-30 01:39 | やさしく歌って・自由日記